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一歩ずつ前に進むブログ

【雑】未経験者として業界に参入したのなら、すぐに諦めてはいけない

私のブログを読んでいる人からすれば、このタイトルは「ITエンジニア未経験者として業界に参入する」話に読み取れるだろう。

もちろんその話にも当てはめられるが、今の私は「未経験者としてカレー(飲食)業界に参入した」身である。なので、この記事は間借りカレー屋として営業する中で感じたり聞いたりしたことが中心になる。

とはいえ自分がITエンジニアに就職した時も、未経験状態だったので、それも交えて書いていく。

対象読者

  • 初心を思い出したい人
  • 最近なんらかの業界に未経験で参入した人

心が不安になるときに陥っている状態を考える

今の所はまったく辞めるつもりはいないのだが、フードが余ってしまうことはよくあり、最悪捨てるとなるとかなり心が痛む。 そういう時、「ああ売れている人たちと何が違うのだろうな」と思う。

それが拗れると、ギブアップにつながる未来もあり得る。

成功している人を間近で見すぎたために現実と乖離したまま参入している

カレー屋を始める前から、私はカレーを毎日食べているような生活をしていた。自分の好きな店を見つけたら週に何度も行くような食べ方をする。*1

そして、大体毎日でも行きたいくらい美味しいなと思える店というのは、百名店であったり、そうでなくても自分のようなファンがめちゃくちゃついている店である。

オープンすれば瞬く間に席が埋まり、ピーク時には外列ができ、閉店まで人が絶えない。

そういう店を、私は見過ぎた。これが最初の現実乖離の始まりになる。

よくよく考えれば、よほどの人気店でもない限り外に列などできない。満席状態が続くことも稀のはずだ。たまたま自分が行く時に満席だから、いつも満席だと思い込んでしまう。

そうすると、クチコミする時も「混んでる」「美味しいけど待つ」「早めか遅めが狙い」と、多くの人が書き込むことになりますます人気となるわけだ。

ITエンジニアに例えるなら、少し前の時期に「未経験から(年収)一千万」というフレーズが流行った。

人々はそこに夢を見たと思うが、実際にITエンジニアをしていた私からすれば「会社員でその境地に至るのは無理がある。フリーランスでもよほど知名度が必要だろう」という肌感があり、現実との乖離が少ない。 だから流されたりはしないのだが、自分が知らない世界のことなんて、やってみないことには理解するのは難しいものだ。

特にXは常人の域を超えた狂人が渦巻く世界のため、余計に成功している人が間近に見えるので、余計に不安になりやすい。

"最初は誰も自分のことを知らない" ことを忘れている

「インプレッションはあるのに。いいね、リポストも割とあるのに」

ITエンジニアであれば勉強ネタ、資格などを元手に新規参入を目指すだろう。

カレー店にもお店のアカウントはもちろんあり、ありがたいことに見てくれている人がいる。

そうすると、なぜか自分は人々に知られているような気がしてくる。 「これだけ発信してるんだから」「たくさん勉強してきたから」「美味しければ毎週でも来てくれるはずだ*2」などと思っていると、現実と乖離する。

人々は自分のこと(仕事レベル)を知らない。それが現実の状態だ。

どんな仕事をするのか、コンテンツだけではわからない。飲食なら食べてみないとわからないし、ITなら一緒に仕事してみないとわからない。

私の間借り先は、同じくカレーを出すレストランであり、さらにファンがたくさんついているため「ああ、今日はシェフ違うの。じゃあいいや」と言って帰る人が多くいる。 店を借りているため、これは仕方がない。自分もその間借り元の店が好きなので、傷ついたりはしないが多少は「まあそんなもんか〜」と思う。

けれども、それは私が知られていないことには中々難しい。

どこかの有名店で修行してから独立したならまだしも、私は未経験参入者なのだ。

自分がうっすら想像していた状況にもならず、つらくなる

カレー店を始めた今、いつも食べているような至高のカレーからは遠いものの、自分が美味しいと思えるカレーを納得した形で提供することはできている。

けれども理想からは遠い。美味しいけど、満足はできない。

ITエンジニアになりたての時、一年くらいやればめちゃくちゃかっこいい仕事ができると思っていた。同じだ。実際はまともな人間的生活ができる報酬をもらうのに4,5年はかかったじゃないか。

一年でできるなら苦労しない。

カレーやラーメンはわかりやすく信者がつくジャンルだ。そういう食べ物は深淵だ。いや、どの食べ物も深淵なのだが、カレーやラーメンは手に取りやすい分だけ安易にそれを覗けてしまう。

身近にあるものは、勝手にハードルが下がって行くものだ。

そうすると、自分が思っていたラインよりに到達できないときに落ち込んだりする。 私でいえば、フードが余ってしまった(思ったより売れない)、とか。

自分が昔どうだったか?を思い出す

ITエンジニアを始めた時の私は、大卒で何も知らないままインフラエンジニアになった。IPアドレスも知らない人間が、未だにこの世界にいると思うと時間をかけて何かをするというのはだいたいのことを解決するなと思う。

私は受験勉強が苦手でうまくいった試しが一度もない。期限が決まっている勉強が嫌いだった。長くじっくり自分のペースでできることが、私の性格上では合っていた。

ITエンジニアを続けられているのは、特に誰かにせかされたわけでもなく淡々と長い時間をかけて色々なことを学んできたからだった*3

最初の頃の収入は、都内で一人暮らしできないレベル(まず引っ越し金がない)のものだったし、家に帰れない時もあったし、入院費で赤字になることもあった。

結論としては続けてよかったという話になるが、その途中の道のりはどちらかというとつらいと思うことの方が多く、生存バイアスとも言う。

とはいえ、ITでもカレー屋でも生き残っている人たちに共通しているのは「やめていない」ということだと思う。なんだかんだで続けて、研究を重ねている。

その上で、先程も書いた通り私はIT業界では4,5年費やしてやっと人並み程度になった記憶がある。私は成長速度がそれほど速くないと思いつつ、無理をしてやると続かないのでこれで良かったとも思っている。

ありがたいことに今は登壇資料やブログを見て声をかけてくれるケースがあるが、当然ながら最初からあったわけではない。

今の人気店の初期はどうだったのか?を知る

人気店となっているお店で話を聞くと、多くの店主は「最初は5食とかそれくらいだったよ」とか「3年やってようやくxxジャンルのお店だって浸透してきたと思う」と言っていた。

5食って、ものすごく少なく聞こえたのだがいざやってみると5食でも完売すれば非常に嬉しいし、初期は十分に難しい数ということが身にしみてわかる。

だからなのか、人気店となった店主は、私の現状に対して否定的なことは言わない(気を使っているだけの可能性もあるが、合わせて自身の体験も話してくれたので建前というわけでもなさそうだと思っている)。

むしろ「とにかくやって試す期間」とか「地道にでも継続する方が優先」という声のほうが多い。

「人がいないからにんにくを焦がして香りで誘っていた」とか「向かいのカレー屋より先に閉めないぞ」とか「SNSは毎日あげてフォロワーから忘れられないようにする」とか「捨てることになっても、売り切れで帰ってしまうより絶対良い。そのお客さんは二度とこないかもしれない」など、地道で泥臭いエピソードを(同じ人から)聞いたりもした。

今や百名店となった店主も「この店の、前の店主がつくる料理が食べたくて来た人は、ないなら帰るって帰ってたよ」と話してくれた。

それはまさに、聞いたことがあるセリフだった。私はただ、彼らのこれまでを知らないだけだったと言える。

これだけ認知のある店でも?と思ったが、人気店が最初から人気だったと思いこんでしまうのは、「自分がその店を認知できた段階で、その店がある程度の知名度になっているから認知できた」ことを忘れているだけだ。

ほとんどの店は、初期段階では誰からも知られていない。

一生かけてやるつもりで

想像より人は泥臭い工夫と現実を乗り越えていることを知ったほうがいいんだと思う。知らないから「私は向いてないかもなあ」という気持ちになったりする。諦めが早いと、これに気づく前にやめてしまう。それはもったいない。

未経験者というのはそれくらい何も持っていない状態で始まっていることを忘れてはいけない。業種が変わって常識も変わっているのに、ついこれまでの世界観を引き継いでセンスでやろうとしてしまうのだ(そもそもセンスは身につけるものなので、それも最初は持ってないはずである)。

私の場合、店主に質問したりしてそれを知った(皆さん良くしてくれたので、私も聞かれたら同じように隠さず回答しようと思う)ので、困っているなら試しに相談するのが一番だろう。

すぐに諦めてはいけない、と書いたが、もう少し今の感覚に寄り添って表現するなら「じっとりでも、時間をかけて続けるしかない」だ。

不定期営業ですがカレー店を営んでいます

よろしくお願いします。

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*1:自分自身が、おいしいと思ったところに何度も通う食べ方(「開拓」と「いつも行く店」のバランスを取っているくらいそもそも外食がめちゃくちゃに多い食生活である)をしているせいで、お客さまの来店頻度に対する認識を歪めている。

*2:相当美味しくても毎週は来ないのが一般的らしいので、月一回でも多いと考えたほうが良いかも

*3:あれをやれ、これをやれという人とは相性が悪い