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ベイビーステップのエーちゃんに学ぶ、成長を感じられないときのふりかえり術

これは、ふりかえり Advent Calendar 2021 25日目の記事です。

13,000字近い超大作なのでご注意ください。

「なんだか前に進んでいる感じがしない」

技術者をしていると、この世界には腕のある人が本当にたくさんいて、自信が持てなくなる時期が何度もあります。 スポーツの世界と同様、スキルパラメータが目で見やすいからかもしれません。

そういうメンタリティになっているとき、大抵、僕は「ふりかえりの力を忘れている」場合が多いです。

どういうことかというと、ふりかえることで得られる貴重な経験値を過小評価しているのです。

もし今日や今週という単位でよかったこと悪かったことをふりかえっていれば、「先月より遥かにできることが増えた。こういうところはもっとよくなる」と思えてたかもしれないわけです。 比較する対象が、自然とVS自分になる。そうすれば、一歩ずつでも前に進んでいる自分を肯定してあげることができるはずです。

なんだか意識が高そうな話ですが「前に進んでいる気がしない。周りの人みんな優秀。つらい」と精神自爆攻撃をするくらいならやったほうが健康的です。

今年の自分のふりかえり方法は、なるべくつらくないように、毎月末にまとめとして成果物や気づいたこととかをブログにしていました。

けれども、もっといい方法があったでしょ。俺もっと前はふりかえり丁寧にやってたでしょ。ということをふと思い出しました。

それが、社会人1年目のときに出会っていた「ベイビーステップ」というテニス漫画から学んだふりかえり術でした*1。 そのベイビーステップという漫画は、文系未経験就職した僕に、重要な思考回路をインストールしてくれました。

最近、久々にベイビーステップを読み返して「エーちゃん(主人公)が超短期で爆速成長したのはふりかえり能力の高さと改善サイクルだし、彼は特別なことは何一つしていない」ということを思い出しました。

今回は、そんなベイビーステップのエーちゃんからふりかえり方法を学んでいきたいと思います。

ベイビーステップとは

ベイビーステップは、マガジンで連載されていたテニス漫画です。

『ベイビーステップ』(英文表記: Baby Steps)は、勝木光による硬式テニスを主題とした日本の少年漫画、およびそれを原作としたテレビアニメ。『週刊少年マガジン』(講談社)において、2007年46号から2017年48号まで連載された。2014年、第38回講談社漫画賞少年部門受賞。2017年11月時点で累計発行部数は1000万部を突破している[2]。

主人公エーちゃんの最初の特徴は「几帳面である」「(特に好きというわけではないが)勉強成績が常にオールA」ということだけです。 親がテニス選手だったとか、幼なじみがテニスやってたとか、隠された超特殊能力があるとかそういうのは一切ないです。几帳面なのはただの性格だし、勉強ができるのは彼が努力で手に入れたものです。

運動不足解消を目的に始めたことがきっかけで、エーちゃんはテニスにのめり込むようになります。始め方も至って普通というか、理由はむしろおっさんみたいです。

几帳面で真面目な男子高校生、丸尾栄一郎が、高校入学を機にテニスの魅力に目覚め、テニス選手として成長していく青春ドラマ[3]。神奈川県藤沢市が主なモデルとなっている。高校生のテニスを扱うが、部活動ではなく地域のテニススクールが主な舞台となる。 作者の勝木光はテニス経験者であり、本作は綿密な取材に基づいて現実的な技術や戦術、トレーニング理論が描かれている。男子シングルスをメインに扱っており、ダブルスはほとんど描かれていない

きっかけは何であれ、エーちゃんはテニスを高校1年の途中から始めます。ただスポーツの世界においては、始めるのは遅い方です。

この経験年数の短さというハンデを、エーちゃんはふりかえりによって徐々にひっくり返し、強者も無視できないほどの成長を見せていきます。(初年度は年間20冊ノートに書き込んでいたという描写がある)

これこそがの魅力の一つです。 今回は、成長を感じられないときにフォーカスしたエーちゃんのふりかえり術を自分なりにまとめて(僕自身が困ったときに)見返せるようにしておこうと思います。

なお2017年に完結ていることもあり、本記事はネタバレが実行されます。ご注意ください。

著作権等あるので、作品内の画像は載せず、何巻のどのシーンですって紹介にします。 気になった方は漫画購入やdアニメストア契約などでお願いします。

ja.wikipedia.org

anime.dmkt-sp.jp

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主人公エーちゃんのふりかえり

ここからは、印象的なセリフと共にふりかえり方法を学んだことを紹介していきます。 流れ上、ネタバレがあるので避けたい方はブラウザバックをお願いします。

「なんでこんな負けた試合のラリーを丁寧に描いてんの?」

9巻:#76 分析

エーちゃんは作品序盤ですぐに、フロリダにテニス留学をします。最先端の技術を使って、短期的に成長するためです。 アメリカ流のテニスに慣れていなかったり、そもそも経験が浅いこともあって、プロがいる中で練習試合に勝つことはほとんどできません。

試合の途中経過をコートチェンジの間に書き留めておいて(現実ではそんなことは無理だと思うが)、あとで試合をふりかえれるようにしています。

そのノートを見た試合相手の妹から

「なんでこんな負けた試合のラリーを丁寧に描いてんの?しかも何?その顔…あんたお兄ちゃんに負けて悔しくないの?」

と言われます。要するに「お前何負けて嬉しそうな顔してんだ、兄貴(アレックス)のこと馬鹿にしてんのか?」と言われます。

エーちゃんはそれに対して「もちろん悔しいけど… でも今の試合は一度にすごくたくさんのことを知れたからよかったとも思って…」と答えます。

ふりかえりによって新しい発想を見出し、理想を追求する

何かに記された事実が、あとで反省点のふりかえりに重要なことは、誰にでもわかります。 僕がこの回のエーちゃんのふりかえりに感心したのは、負け続けてもふりかえりをやめなかったことで、結果的にコーチが持っていない新しい発想をしたことです。

負けが続いて、アメリカの選手のプレースタイルがだんだんと見えてきたタイミングで、
(このときの)アメリカ流のテニスはパワーとスピードを決定力にするのが主流だと教わります。 だから、決定力のない今のエーちゃんは勝てない。

エーちゃんはそれを聞いて、「(決定力があればいいなら)パワーとスピードに頼らずコントロールじゃダメなんですかね」と提案します。

パワーとスピードももちろん鍛えるけど、自分はコントロールも鍛えたほうが効率がいいと思う。とはっきりわかっていました。 (「全てのボールに追いつき、それをコントロールできれば理論的には負けない」という最強の理想から来ています)

どうやらコーチにその発想はなかったらしく、さっそく新しいメニュー考えてみるよと良い返事をもらいます。

ここでさらにエーちゃんのふりかえりがすごかったのは、その日のうちに明日以降の話をまとめていたことです。

  • 「(コートの後ろから)決めに行くなら(中略)ある程度の球威もいる…」
  • 「難波江くん戦でやったテニスに安定感と球威が必要になるってこと…なんかいい方法ないかなー… あ…そうだ 明日これやってみよう!」

今さっき自分が導き出した暫定のベストアンサーと過去の記録をふりかえって、さらによさそうなアンサーを思いつき、加えてこれを試してみようと仮設を立てました。
このスピード感は、あれこれ悩む時間を生まないので自然と前向きになれそうです。

長くなってきたので、流れをまとめてみましょう。

  1. 負けている理由をふりかえりでうっすら特定している
  2. わかっていそうな人にアドバイスをもらう。予想は正しいことがわかる
  3. 自分に足りないのは決定力ということがわかる。この国の選手に対抗するにはパワーとスピードを鍛えたほうがいいことがわかる
  4. これまでの経験から、パワーとスピードだけでなくコントロールを決定力もできないかと伝える
  5. それで行こうと決まる
  6. コントロール重視で行くにしても、結局パワーはいることに過去の記録から思い至る
  7. 「一撃で決められるパワーでコントロールする」という意識をもって練習に取り組む

その後、この練習によってコントロールは急速に向上していくことになります。

負けに対しても冷静に記録を取り、分析をやめなかったことが最初のポイントだったと言えます。
有識者に頼るにしても、自分なりの仮設がないと的を射た回答は貰いづらいです。

それを自然かつ効率的に実施できる点でふりかえりは継続的にやっていきたいところです。

エーちゃん流でふりかえるためのポイント

ふりかえりとアドバイスから、理想のためにアクションを回し始めています。

負けが続いている状態とは、技術的進歩はあるはずなのにうまく機能していない状態か、そもそも技術が足りない状況なのでしょう。

エーちゃんは「何が原因で、理想の状態に至っていないのか」を特定する能力が高いように見えます。

ひとえにノートに事実をびっしり書き込んで、プレー中やプレー後にずっとああでもないこうでもないと考えているからなんですかね。

このエーちゃんの成長方法を見ていると、

  • 事実をどれだけ書き残しておけるか
  • 考えて、調整した結果も残して置けるか
  • 自分が目指さんとする理想はどこにあるのか。そことのギャップは何なのかを考え続ける

というのがふりかえりでは重要な要素としてあるんだろうと感じました。

つまり、エーちゃん流でふりかえるためには

  1. 理想が明確である: 「全てのボールに追いつき、それをコントロールできれば理論的には負けない」
  2. 事実を書き残す: 試合中、練習中の事実(ボールが何球続いたか。どこへ打たれたか、打ったかなど)
  3. 考える: どうやらアメリカの選手は球威がある。自分はそれに押し負けてるか、一撃で決められている
  4. 調整する: 有識者に質問する。その回答を受け入れつつ、理想はこうなんだけどどうにかならないか微調整する
  5. ギャップを埋めるアクション: パワーのあるコントロールボールを打てるようになればええやん!

という流れを繰り返していけばよさそうです。

KPTやYWTがうまくいかない自分

僕自身は、実はふりかえり手法に詳しくありません。

とはいえ、KPTやYWTなどのフレームワークに馴染みはあります。でも、いつもしっくりこないのです。

効率の良いフレームワークなのはわかっているのですが、これに則るとなぜかピンとくるふりかえりができない。フレームワークの枠の中に囚われているような、不自由な感覚になります(よって、個人的に好みじゃない)。

とはいえ、YWTに関していえば、やったことわかったこと次やること、なので次のアクションを決めるのに有効そうです。
エーちゃんのふりかえり法ともそこまで差異はなさそうですよね。

しかし、エーちゃん流のふりかえりをまとめたときに気づいたのは「理想の明確さ」ではないかと思います。

これまでYWTをやったときは、どうありたいかという目標がイマイチ想像できていなかった気がします。自分ごとレベルが低い可能性もあります。

特に、僕には理想とする状態がありません。世界を変えたいとか、こういう技術者になりたいとか、そういうのがないです。就職先がなくて仕方なくIT技術者になったタイプの人間です(今はそれなりに好きでやってる)。

そうすると、ふりかえってもたいした学びが得られない。じゃあわざわざ過去振り返る必要なくない?とめんどくさくなっていく悪循環。

もしあなたが「ふりかえり、うまく行かねえな…これなんか意味あるんですかね……」となったら「理想の状態とか目標ってなにかなかったけ」と立ち止まってみましょう。

未来と今のギャップを埋めるのがふりかえりであることを、僕はエーちゃんから学びました。

それから、無理にフレームワークに当てはめる必要もないんじゃないかと最近は感じます。
自分なりのふりかえり方法が確立されていて、目的が達成できるならそれで良いはずです。

「Believe in yourself」

9巻#79 壁

エーちゃんはコントロールやパワーを満遍なく練習し、実際に向上します。

しかし、勝てない状態が実際は続きます。

27戦全敗。まったく勝てる兆しが見えない。 どうしてだ、明らかに技術は向上している。それはノートでもわかるし、コーチからもお墨付きをもらっている。何かがおかしい。

エーちゃんのふりかえりには、足りないものがありました。

それが、メンタル面のふりかえりです。

負けが続いたことで、勝ちを求めるようになります。 実力差のない相手にも、調子が悪いわけではないのにここぞというときにポイントが取れない。

毎日ふりかえって、練習して、改善してふりかえって……いつも以上にいい感じなのに、なんでだよとかなり苦しい状況。 そのループにはまって、心の余裕がどんどんなくなっていきます。

すでにプロとして活動する、アレックスがエーちゃんに話しかけます。

「マルオ(エーちゃん)はプロになりたいんだよね?」

そこで、印象的な言葉をかけられます。

「Believe in yourself」

プロとしてやっていきたいなら、自分を信じろ。ということです。

しかし「自分を信じられなくなってきてるから焦ってんだよな それにそもそも俺はもとから自信がある方じゃないし」と、エーちゃんは言われた瞬間はよくわかってませんでした。

この気持ちはよくわかりますね。そんな事言われても……みたいなやつ。

その後、メンタルコーチの元に行きエーちゃんの状態が明確になります。 負け癖といって、勝ちにこだわるあまり重要なポイントで力が入って失敗するというものです。

エーちゃんからすれば、意識してしまうと余計に力が入って調整しようがない問題であり、本人も困っています。

そこで、メンタルコーチが伝えたのは

  1. 負け癖は誰もが通過するスランプであること
  2. モチベーションダウンではないことを知っておくこと
  3. 最も良くないのは、勝ちたいと思う心すら無い状態。だから、負け癖は最悪ではないと知ること
  4. このスランプは人によって治し方がぜんぜん違うということ
  5. 治し方が違うということは、原因を特定し、自分なりの方法を探し出す必要があること

でした。
このメンタルのふりかえり、ひとつひとつ事実を自覚して行こうとしている点が重要そうですよね。

これは誰もが経験することだよ、モチベダウンじゃないから君のせいじゃないよ、最悪の状態ではないんだよ、君自身が克服することなんだよ

と一個ずつ確認することで、「なるほど今自分はそういう状態なんだ、ということを知る」とメタ認知により冷静になります。

なお今回の場合、原因ははっきりしていました。

アメリカのテニスになれるために勝ちにこだわらず技術を身に着けていったが、その結果負けまくって本能的に自信を失っていた。ということです。

メンタルコーチは、すでに頑張っている君に頑張れとは言わない代わりに…とアメリカ流の言葉を伝えます。

「Good luck!!」

この回で、エーちゃんはメンタル面のふりかえり方法を教わったのでした。原因は必ずしも肉体的技術だけではなく、メンタルも重要な要素です。

プロの世界は負けた人じゃなくて 自分を信じられなくなった人から脱落していくんだ…ってよくお兄ちゃん(アレックス)に怒られる…」

結果が出ないときでも自分を信じられないと、続けることができないのは技術者も同じではないでしょうか。

その後、エーちゃんは試合に挑みます。

どんな出来事でも、何か変化があったらスルーしない

9巻#80 同じように

試合開始直後、エーちゃんは心の余裕のなさから靴紐が解けていることにも気づかずコートで転びます。

あーあ最悪の展開だなあと思いつつ、ガットがガタガタしていることにも気づいていなかった自分にため息をつきます。 しかし、それが功を奏したのか「できるだけやってダメなら、あとは運!!」と一旦吹っ切り始めました。

靴紐を結び、ガットを直し、深呼吸したあと突如エーちゃんの動きが変わります。

「今…なんかよかった 何がよかったんだ?」

転んだりガットがゆるんでいた事自体は全然いいことじゃないし、本当に運だったのか?とその場でふりかえりをします。

「でも 最悪の状況を一瞬でも脱したのは確か」

だと、試しに毎回サーブ前にガットを直して深呼吸する一連の動作を始めます。 するとやっぱりうまくいく。 ガットも直すから、几帳面なエーちゃんにとっては気持ちがいいです。

結局これが、いわゆるルーティーンとしてうまく作用することになりました。 きっかけは偶然転んだことであり、偶然ガットを直しただけです。

「なんか転んだのがラッキーだったみたいですね」
「それだけじゃないよ だって普通転んだところから新しいアイディアなんて見つけられる?」

という会話を、メンタルコーチとサポーターがしています。

エーちゃんがこのルーティーンを見つけたのは、きっかけは転ぶという偶然でしたが、ルーティーンへと昇華させたのは間違いなく「ふりかえり」による効果だったはずです。

小さなことでも、変化があったら逃さない習慣の重要性が垣間見えます。

「今までやってきたことを… いつもどおり自分を信じてプレーすること!!」

そしてこの試合では、エーちゃんがアメリカでの初勝利を収めるのでした。

失敗したときほど発見するエーちゃんのメンタリズム。果たして、フィクションだからでしょと言っていいのか?

9巻#81 知りたいこと

エーちゃんはこの短期留学で、9割以上が負けで過ごすことになりました。

試合後、エーちゃんのノートをサポーターの人がふいに読み上げます。対戦相手の弱点や特徴がびっしり書かれていて、それを見た生徒は皆驚きます。

「そういや ずーっとなんかやってたもんな …結局こういうのが 結果になったってことか」

メンタル面でうまく噛み合わなかっただけで、実力がないとか、成長していないわけではなかったわけです。
エーちゃんはひとつのきっかけで覚醒しましたが、突如特殊能力に目覚めたわけではありません。 これまでやってきたことが、ようやくハマり始めただけでした。

負けたときや失敗したとき、うまく行かない時ほどふりかえりをし続けることは、僕らにもできるはずです。

感想というか、これまでのふりかえりをふりかえる

冒頭で僕は、ふりかえりの力を忘れているという話をしました。

忙しいを言い訳にふりかえりしなくなりました。でも、元々はふりかえり魔であった時期がたしかにありました。

記録魔だった高校時代

僕がを知る前、実はエーちゃんと似たようなことをやっていた時期がありました(厨ニみたいだけど本当だから信じてくれよな!)。

野球見るのが好きで、日本プロ野球の全日程全試合の対戦表・スタメン・記録(HR、記録更新など)をなぜかノートに書き込んでいる時期がありました。

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こういう記録は冊子になってまとめられたりするので、今思えば本当に意味不明なんだけど、ベイビーステップでノートにすごい記録取る主人公をみたときに「なんかこいつの気持ちわからんでもない」と思ったわけです。

実践→失敗→見直し→実践→失敗の無限振返編を実施したバイト

大学時代、ファミレスでバイトを始めました。厨房だったので、初心者には厳し目の環境でした。正直きつすぎて毎回泣きそうになりながらやってたんですが、今思えば人生でもっとも高速なふりかえり活動をしていたと思います。

まず端的にいって要求されるスキルが多すぎます。

  • メニューをいきなり言われても聞き分けられるだけの知識
  • 材料要素
  • 調理工程
  • 材料を捌く包丁スキル
  • 別の調理が同時多発的に発生しても並列処理するスキル
    • 今ハンバーグ焼き始めてx分たったからそろそろ付け合せを作り始めて…みたいなのが4〜5並列で走っていて、かつパスタや唐揚げやらも同列で走ってるイメージ
  • 別のスタッフが今何をしているかを把握する視界
  • どの料理から先に出すのかを覚えている記憶力

みたいなのが常に要求されて、初心者はとても戦力にはならないです。

最初は何をやってもうまく行きませんでした。まいどまいど先輩たちにめっちゃ怒られます。

ノートを取る余裕も体力もありませんでしたが、その代わりに、その日の動きでうまく行かなかったことがはっきり頭の中にイメージして残ってました(たぶん先輩が怒るから恐怖感情に紐付いて印象に残りやすかっただけ)。

そこで最初に「わかった。とりあえずステーキ。このステーキだけは確実にできるようにしよう」と、自分が得意だったステーキ処理から確実に仕上げられるように始めました。

そのメニュー名が聞こえたら、俺がやってやるぜとその調理を開始します。てかそれしかできないから、それしかやらせられない現実もあったでしょう。

結果的に、僕はそれ以降そのメニュー名があだ名になりました。それしかできないので。

あとはそれを繰り返す。ひとつずつできることを、確実に増やす。何度怒られても、昨日よりはうまくなっているという自信がありました。

メニューはできるだけ事前に記憶しつつ、試作という形で暇な時間に作っていい制度があったのでイメトレ的に作ってました。従業員の昼ごはんをわざわざ作らせてほしいと言って、余裕のある時間に練習できてたのも良かったでしょう。

これで、忙しくないときはできて、忙しいときに出来ない差分が取れます。

もうこんなことを無限回やっただけです。夢の中でもオペレーションしてて、起きてすぐ「ああなったら次はこうする」とか言ってふりかえりをしていました。

最終的にワンオペで回せるようになっていて、
「お前は入ったときは喉乾いたとかつらいとか言って全然使えなかったけど、この1年で一番成長をしたのはお前だった」と店長に言われるところまで行ってました(なおその後すぐバイト辞めた模様)。

エーちゃんと同じ、修正と実験を繰り返しまくっただけです。でも、本来それでいいんだと思います。

ノートに書く書かないは手段であって、
ふりかえりというのはシンプルに、理想の状態に近づけるための修正アクションです。

社会人でベイビーステップを知る

社会人1年目でを知ったときに「ああエーちゃんのやり方は自分にも合ってるかもしれないな」と素直に思いました。

記録魔であったこと、バイト時代に何度も失敗を繰り返したことが、なんだかんだ自分の中で重要でした。

実際に技術的な部分(機密に当たらないところ)だったりその日感じたことはノートに書いてました(SESだったので自分のPCという概念もないし仕方なく物理ノート)。※なぞの落書きはぼかしてます

新卒の会社に在籍していたのは1年9ヶ月だったので、エーちゃんほどの文量はかけてませんね。なお適切に処分済です。

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Baby steps to Giant strides

話をに戻すと、
Believe in yourselfを教えてくれたアレックスは、エーちゃんとの試合中にこんなことを思います。

10巻#88 夢

「(エーちゃんは)大きな夢を持てない自信のないタイプかともおもったけど それも違う…」
「小さくても無数にある夢をひとつずつ確実に叶えていくタイプの奴なんだ」
「ひとつひとつは小さくても 無数に叶えれば それは いつの間にか大きくなる」

その後、エーちゃんがフロリダ留学から帰ったとき、留学中に出会ったメンバーがメッセージをノートに残してました。

アレックスは、試合中に感じたエーちゃんの特性を短い言葉で表現します。(10巻#90 帰国)

「Baby steps to Giant strides」

直訳は「よちよち歩きは大きな歩幅へ」です。
英語圏のことわざで「千里の道も一歩から」という意味で取れます。

この言葉がすごく好きで、最初ブログのタイトルをこれにしていた時期があります。ちなみに今もその精神は忘れないよう、サブタイトルで残しておいてます。

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ITは奥が深く、やってもやっても知らないことが出てきて、専門分野でない領域は凄腕技術者でも全く知らないということがザラにあります。
そういうときでも絶望しないように、すべては最初の一歩からちょっとずつ始まるんだと言い聞かせるようになりました。

ベイビーステップは僕に、重要な思考回路をインストールしてくれたのです。

おわりに

超大作になってしまったこのふりかえり記事もいよいよ締め作業です。

ふりかえりをふりかえれとはよく言ったものですが、僕自身がふりかえりを過小評価していることに気がついたことが今年最も幸運でした。

ふりかえりと改善は継続してようやく意味を成すのだと、ベイビーステップは教えてくれます。
今回はエーちゃんのフロリダ留学にフォーカスしましたが、ベイビーステップ的には9、10巻の内容であり超序盤のエピソードです。
このあとも、実に多くのふりかえり名場面がドカドカ登場します。全47巻、エーちゃんはふりかえりし続けているようなものです。ぜひ気になった方は原作をお手にとって見てください。

 

昨今、ITが一般的に普及したことでたくさんの人がプログラミングに触れるようになりました。僕が就職した2015年時にはなかった空気感で、すごく良いなと思います。

ただSNSでたまに見かける「プログラミングで人生一発逆転」という煽りを見るたびに違和感を持ったりします。
僕のこれまでの経験上、一発で逆転するほど簡単でもなかった気がしているからでしょう。

本当に人生どん底から一発逆転した人もいると思いますが、前提として「一発逆転ホームランを打てる奴は、ホームランを打つ身体と技術、逆転時に打席に立てるメンタルを持った奴しか打てない」はずです。

その心技体は、いつからか継続されてきた日々の積み重ねです。

僕もたまに「急に覚醒してとてもいい仕事ができたりしないかなあ(遠い目)」と思うことはありますが、そんなこと急には起きないということですね。
まずは確実にボールに当てる練習しよう、話はそこからです。

僕らなら必ずできるようになる。Believe in yourself !

*1:正確には社会人1年目のときにアニメ第2シーズンが始まっていて知った